水槽などのお掃除生体として、ヒメタニシの導入を検討されている方が多いのではないでしょうか。実際に飼育してみたという方もいらっしゃると思います。
今回は
ヒメタニシのコケ取り能力はどのくらい?
ヒメタニシは繁殖力がすごいの?
いつのまにか死んでいる・・・原因不明!
といったヒメタニシに関する疑問にお応えする内容です。
ヒメタニシの特徴・飼育方法・繁殖について解説していきますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
ヒメタニシとは?

ヒメタニシは、日本中に生息している在来種の淡水性巻貝です。
田んぼや用水路など自然界の水辺でも見ることができる生き物なんですね。日本には、マルタニシやオオタニシといった別種のタニシも存在します。
ヒメタニシの特徴
ヒメタニシの大きさは、成長しても3cm程度です。
殻はヒュッと尖った巻貝形状で茶褐色、体は灰色で2本の触角があります。殻にコケが生えて緑色になっていることもありますよ。
夜行性で昼間はあまり動かないので、「生きてる?」と心配になる方も多いようです。性格は大人しく、他の生体を攻撃することはありません。
ヒメタニシの寿命
ヒメタニシの寿命は2〜4年程度で、貝の中では長生きです。
飼育下では短命になると言われることがあり、きれいな水槽では餌になるプランクトンなどが少ないことが主な原因ではないかと推測されます。ヒメタニシにとっては、自然界に近い屋外のビオトープのような環境のほうが居心地が良いのでしょう。
ヒメタニシの餌を維持することが長生きの鍵となりそうです。
ヒメタニシのお掃除能力
お掃除生体として有名なヒメタニシですが、その能力は高く、特有のメリットがあります。とても優秀なお掃除屋さんである理由を解説しますね。
どんなコケも食べる
茶ゴケ・斑点状藻・アオミドロ・藍藻(らんそう)・珪藻(けいそう)・アオコなど、ほとんどのコケを食べてくれます。
ただし、水草に付いたコケを食べるのは苦手なようです。
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濾過摂食
水中のプランクトンや有機物を吸収して食べる濾過摂食という能力を持っています。水ごと取り込んでエラで濾した物を摂食し、きれいになった水を排出するので、水質維持に役立つと言われているのです。
コケ取り生体は数多くいますが、水中のアオコなどを食べてくれるのは濾過摂食ができるヒメタニシだからこそ。アクアリウムに用いられる生体としては他にない能力です。
底面の不要物も食べる
ヒメタニシは雑食性で、枯れた水草・餌の食べ残し・生体の死骸なども食べます。水槽のガラス面だけでなく、底に溜まった汚れをもぐもぐしている姿も見かけますよ。
生きた水草は食べないので食害の心配はありません。これは嬉しいメリットです。

ヒメタニシの飼育方法
ヒメタニシに適した飼育環境について
水温
水質
底砂
餌
の4点を詳しく解説します。
ヒメタニシの適応水温
ヒメタニシは水温5〜30℃まで適応しますが、17〜28℃程度が元気に活動する水温です。
寒くなると冬眠する習性があり、10℃以下になると動きが鈍くなります。低水温には比較的強いですが、高水温には弱いので30℃以上にならないようにしましょう。
屋外のビオトープでも、適応水温であれば問題なく飼育できます。夏場に水温が上がるようであれば、すだれや浮き草で直射日光を避けてあげると良いです。

ヒメタニシの適応水質
水質は、弱酸性~弱アルカリ性(pH5〜9程度)と幅広く適応します。
水質悪化などで酸性に傾きすぎると元気がなくなるので、ある程度は水換えなどで硬度を保ちましょう。
他の貝類のように飼育容器から脱走する心配はないので、蓋のない睡蓮鉢などで飼育できます。水のある場所までは上るので、水位は容器の縁から5cm弱程度下げておくと安心です。

ヒメタニシに適した底砂
ヒメタニシは底床に潜る習性があるので、目の細かい砂が向いています。
砂の種類自体はどんなものでも問題ありません。混泳する生体が熱帯魚であればソイルや田砂にするなど、混泳相手に合わせて選んでください。

ヒメタニシの餌は必要?
ヒメタニシ用の餌は、必要な場合があります。
「ヒメタニシはお掃除生体として導入しているので餌は必要ない」と思われることが多いのですが、
水槽のコケなどが足りなくて餓死する場合があるのです。むしろ、ヒメタニシの死因の多くがエサ不足である可能性があります。とても食欲旺盛なんですよね。
屋外ビオトープであれば、日光によって植物性プランクトンやコケが発生しやすいのであまり心配はいりません。きれいな室内水槽は、一応エサ不足を疑っておきましょう。
様子を見ながら、プレコタブレットなどの沈むタイプの餌を与えるのが一般的です。ただし、与えたまま放置すると水が汚れるので、2時間程度で食べ残しを引き上げると良いでしょう。
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オスメスの見分け方
貝類は、雌雄同体の種も多いのですが、ヒメタニシは雌雄異体でオスとメスの見分けがつきます。
2本ある触角が両方まっすぐ伸びているのがメスです。オスは右側の触角が丸く巻いています。
稚貝のうちは判別できませんが、成長した個体であれば見分けやすいです。繁殖防止で意図的にオスだけ導入するということも可能です。
ヒメタニシを飼育する際の注意点
ヒメタニシの飼育中に遭遇するかもしれない以下の3つのことについて、注意点をご紹介しておきます。
繁殖による増えすぎ
動かなくなる
グリーンウォーターへの導入
繁殖による増えすぎ
水質などの環境が良いと大繁殖することがあります。
たくさんお掃除をさせたいからといって、導入時に入れすぎないようにしてください。水槽サイズにもよりますが、まずは1〜3匹程度を導入して様子を見ましょう。
あまり増えすぎると水槽の景観問題に加えて、ヒメタニシの餌不足も心配になります。増えすぎたときはバランスを見て間引くことも必要ですが、生態系を崩す危険があるので自然の水辺には放さないでくださいね。
ヒメタニシが動かない!
「ヒメタニシがしばらく動かないけど死んでいるのでは?」ということがあるかもしれません。
動かない原因は
水温が低い
水質が酸性に傾きすぎている
寝ている
ということが考えられます。水温水質に問題がない場合は、あまり心配せずに1週間ほど様子を見ましょう。マイペースな感じで、個体によって動きが違うことがあります。寝ているだけということも多いです。
もし死んでいるのであれば、かなりの悪臭がします。
グリーンウォーターがクリアウォーターに!
ヒメタニシは、意図的にグリーンウォーター(植物性プランクトンを豊富に含んだ飼育水)を作っている水槽には向きません。
ヒメタニシの濾過摂食という能力について前述しましたが、この力でグリーンウォーターを透明にしてしまいます。
グリーンウォーターをクリアにしたいなら良いのですが、メダカや金魚の稚魚を育てるためにグリーンウォーターを維持したいといった場合は導入はやめましょう。
ヒメタニシの繁殖

ヒメタニシの繁殖は難しくありません。
繁殖するための環境や繁殖の特徴について解説します。
繁殖に適した環境
ヒメタニシの繁殖にはオスとメスの個体が必要です。
自然下では6〜9月が繁殖期となっており、水温20〜28℃が繁殖に適しています。飼育水の硬度を高めに保つと繁殖しやすいです。
ヒメタニシの繁殖の特徴
ヒメタニシは、卵ではなく稚貝を産む卵胎生です。卵をメスの体内でふ化させ、5㎜程度の小さなヒメタニシを産みます。
1回に産むのは3匹ほどですが、メスはオスの精子を体内に蓄積して、自分のタイミングで何度も産むことができます。繁殖スピードはそこまで早くないですが、環境が良ければ着実に産まれて、卵生よりも生存率が高いのは確かですね。
メスは精子を蓄積している可能性があるので、増やしたくない場合は、オスだけ導入することで繁殖を防げます。
まとめ
ヒメタニシは、コケ対策や水質維持に重宝する強力なお掃除生体です。濾過摂食という能力を持つことから、他のお掃除生体とは一線を画した存在と言えます。
卵胎生なので、水槽に卵を産みつけて景観を損なうことがなく、繁殖を望まない場合はオスだけを飼育することも可能です。
餌不足による餓死には注意が必要ですが、水槽でも屋外ビオトープでも簡単に飼育できて、ある意味最強のお掃除屋さんかもしれませんね。