

ベタは、様々な形の大きな美しい尾ヒレと、鮮やかな体色が魅力の熱帯魚です。そしてその見た目の美しさを保つためには、全身に力を入れてヒレを目一杯に広げる行動であるフレアリングが必要不可欠です。
ここでは、ベタのフレアリングの必要性と、方法や注意点を解説していきたいと思います。
フレアリングとは

フレアリングとは「Flare(フレアー):朝顔のように広がる、膨らむ」という意味の英語から分かるように、ベタがヒレを大きく見せる、広げる、という行動のことを言います。これがどんな時に行われるかというと、オス同士が威嚇する時とメスに対して求愛する時です。
ベタは別名を闘魚と書きます。名前の通り、同種間で戦う習性を持ちます。個体の性格によってはその限りではありませんが、特にオス同士の戦いは酷くどちらかが力尽きるまで戦い続けることもあります。


そんな戦いの際、いかに体を大きく強く見せるかのために行われるのがフレアリングです。猫が怒った時に全身の毛を逆立てて威嚇するように、ベタも全身に力を入れて、胸ビレ、背ビレ、尾ヒレ、臀ビレと鰓のフタ部分(鰓蓋)、つまり全てのヒレを目一杯の大きさに広げ相手のオスを威嚇します。自分はこんなに大きくて強いんだぞ、逃げるなら今のうちだぞというアピールをします。
このフレアリングは、オス同士の戦いの際だけではなく、繁殖の際にメスに求愛する際にも行われます。自分がいかに美しく繁殖能力の高いオスであるかをメスに対してアピールします。
また、各ヒレがオスよりも小さいため目立ちませんがメスのベタも威嚇する際はフレアリングをします。

フレアリングのメリット
観賞用に飼っているだけで戦わせるなんて事しないし、そんなフレアリングなんてさせなくてもいいのではないかと思う方もいると思いますが、フレアリングをさせる事は観賞魚としてのベタの魅力を保つための大きな役割があり、実際に以下のような4つのメリットがあります。
ヒレの形を美しく保てる
全身の筋トレになる
鮮やかな色彩を保てる
健康状態のチェックができる
ヒレの形を美しく保てる
ベタの1番の魅力は大きく美しいヒレで、各ヒレが他の熱帯魚に比べるととても大きく優雅に水の流れに揺れます。特に尾ヒレは形ごとに細かく名前が分かれているほど大切なチャームポイントです。
ベタは飼育環境に慣れて落ち着くと威嚇する必要が無くなり、ヒレを広げることが少なくなります。そうすると力の抜けたしぼんだ状態でヒレが癒着してしまい、そのうちヒレを広げようとしても広がらなくなってしまいます。そうなる前にフレアリングを毎日させて定期的にヒレを広げる事で、ヒレの癒着を防ぐことが出来ます。
また、ヒレが広がらなくなると水通りが悪くなり尾ぐされ病にもなりやすくなると言われているので、その予防になるとも言われています。

全身の筋トレになる
フレアリングをするには全身の筋肉に力を込めないといけないので、ベタにとってはいい全身運動や筋トレになります。力を入れることで全身の血の巡りが良くなるという事なので、体力が落ちるのを防ぎベタの健康を保つのにも有効です。

鮮やかな色彩を保てる
暗い所で飼われていたり、なんの刺激も無い環境で魚を飼うと、体の色の鮮やかさはどんどん無くなっていきます。威嚇や求愛をする時は体の発色も普段より鮮やかになるので、人工的にでもフレアリングをさせることにより感情の起伏を起こさせて鮮やかな色彩を保てます。

健康状態のチェックが出来る
魚の体調をチェックする方法としては、エサをしっかり食べているかの確認が手っ取り早い方法です。そしてベタの場合はフレアリングをするかどうかでも体調のチェックが出来ます。フレアリングは全身の筋肉を使うため、調子が悪かったり体力が無いベタは行うことが出来ません。なのでしっかりフレアリングをしてくれるならば体調は崩していないということが分かります。

ベタの基本的な飼育方法を解説した記事はこちら
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フレアリングのさせ方

フレアリングのさせ方には、大きくわけて2つの方法があります。
他のベタと隣り合わせにしてみる
鏡を見せてみる
それぞれのやり方について説明します。
他のベタと隣り合わせにしてみる
もし数匹でベタを飼っているなら、お隣のベタと隣り合わせにするのが1番早いです。
水槽越しにお互いの姿を認識させることによって、お互いにフレアリングをしてくれます。
ここで大切なのは、ベタ同士を同じ水槽には入れないという事です。同じ水槽に入れてしまうと喧嘩が始まり、強い方が弱い方を追いかけ回してヒレや体をかじってボロボロにしたり、弱い方のベタが逃げ回って暴れることで水槽から飛び出したりして最悪の場合は死んでしまいます。
あくまで水槽越しにお互いの姿を見せるだけに留めて下さい。

また、常に隣の個体が見えるようにしておくのはオススメしません。長時間フレアリングをすることで必要以上に体力を消耗してしまいますし、そのうちお互いの存在に慣れてフレアリングをしなくなっていきます。
フレアリングの最中はベタの様子を見守りつつ、疲れさせないように1日1回あたり5分程度で終わらせましょう。

鏡を見せてみる
ベタを1匹しか飼ってない場合は、わざわざ他のベタを飼う必要はありません。鏡を見せることで、鏡に映った自分を他のベタと錯覚してフレアリングするはずです。

ベタを隣り合わせにするやり方の時と同じように、ずっと鏡を置いてフレアリングを長時間させておくのは体力を消耗して疲れてしまうので、こちらも1回あたり5分程度で終わるのをオススメします。
鏡にこだわらなくても人やぬいぐるみなどに対してフレアリングをする場合もあるので、何に反応するのか試してみてもいいと思います。

また、上記2点のやり方をしなくても、水換えなどの刺激によってフレアリングを勝手にする個体も居るので、1日のうちで数分フレアリングしているようなら追加で行わなくても大丈夫です。
フレアリングの注意点
フレアリングの注意点は、長時間させない事とオスのベタ同士を同じ水槽に入れないという事です。長時間フレアリングをさせ続けるのは、ずっと威嚇させているのと同じことなので体力を消耗してしまい、疲れさせてしまいます。疲れさせてしまっては、ベタの美しさを保つためのフレアリングがデメリットになってしまいます。
また、食後すぐにフレアリングをさせると消化不良を起こすという情報もネット上にはありますが、それには個体差があります。もし気になる場合は、食後すぐは避けてあげましょう。

もしも繁殖目的でオスとメスを同じ水槽に入れている場合は、オスがフレアリングをしながらメスに近づいて行っても慌てて離す必要はありません。つついたり追いかけ回すような攻撃行動に出ない限りは、自分のオスとしての魅力をアピールしているだけなので見守ってあげてください。ただし攻撃行動が見られるようなら、相性が悪い可能性が高いので一旦離してあげましょう。


まとめ
ベタのフレアリングの必要性や注意点などについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
お店で見た綺麗なベタに一目惚れしてお迎えしたのはいいけど、何故かどんどんヒレがしぼんでいくし体色の鮮やかさが無くなってしまった…となっては寂しいですよね。
フレアリングは、正しく行えばベタにとってメリットばかりです。おうちにベタをお迎えした際はフレアリングをさせて、ベタの魅力を存分に楽しみましょう。

