

ベタは実は比較的繁殖に挑戦しやすい魚です。初心者向けのメダカの繁殖と比べると、相性の見極めだったり、隔離だったり、気をつけてあげるポイントは多いので多少手間がかかりますが、その分成功した時の喜びはひとしお。
一度成功したらハマってしまう人も少なくありません。そんなベタの繁殖の、お見合いから隔離までを徹底解説していきます。
ベタはどうやって繁殖する?
ベタを繁殖させるためにおすすめの水質や水温は、ベタの通常通りの環境とほぼ変わりません。飼育容器に関しては、ベタ1匹ならコップなど狭い容器でも飼えますが、繁殖となると時に100匹以上の稚魚が生まれる可能性もあるので、最初からある程度のサイズの水槽で始めると楽です。
繁殖のためのおすすめの環境
水槽のサイズ:30cm以上
水質:弱酸性~中性
水温:25~27℃

ベタの繁殖にはまず成熟したオスとメスが必要で、さらにそのペアの相性が良いことが必須条件です。ペアの相性が悪いとケンカになってしまい、繁殖どころではありません。
ベタの世界にも気が合う合わないがあるというのは面白いですよね。ベタが成熟しているかどうかのチェックポイントはこちらです。

オス:体がある程度の大きさまで育ち、泡巣を作っているかどうか
メス:卵がたくさん詰まってお腹がポコッと膨れ、白い産卵管が飛び出しているかどうか

ベタの繁殖行動の中で一番特徴的なのは、オスのベタが泡巣を作る事です。泡巣とは、成熟して繁殖する準備のできたオスのベタが口から細かい泡をいくつもいくつも出して、水槽のすみっこや浮き草の周りに作る泡の塊の事。
これは卵や稚魚を育てるためのゆりかごのようなものです。事前に子どもたちのためのゆりかごを準備してくれるので、ベタはとても育児熱心ですね。
ちなみに、ベタには様々な尾ひれの形や模様があり、細かく名前が分かれています。例えばダブルテールやハーフムーン、クラウンテールなどといった種類がありますが、同じ種類同士でしか繁殖しないのかというとそうではありません。
ハーフムーンのオスとクラウンテールのメス、というように尾ひれの形が違う種類で繁殖させて、どんな稚魚が発現するのか試してみるのも楽しみのひとつです。

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ベタを繁殖させる際の注意点
ベタを繁殖させる際の注意点は、こちらの3点です。
オスとメスが成熟しているかどうか
オスとメスの相性の良さ
親による食卵
成熟しているかどうかの見分け方は、上記で説明した通りになります。相性の見極め方や、食卵の防ぎ方については次の章から説明していきます。
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ベタのお見合い
お見合いの必要性
ベタの繁殖は、まず水槽やコップ越しのお見合いから始まります。なぜ最初からいきなり同じ水槽に入れないのか?それはとても危険だからです。
ベタの世界では、ペアの相性というものがとても大切になってきます。相性が悪ければ、相手を傷つけ最悪オスメスどちらかが命を落としかねません。
そしてとにかくオスが強いと思われがちですが、メスも気の強い子だとオスを追いつめてヒレや体をかじったりしてボロボロにしてしまう事もあります。

お見合いのさせ方
水槽同士を隣り合わせに置いても良いですが、オスがいる水槽の中にメスを入れた透明のプラスチックのコップなどを浮かべるのが一番オススメなお見合い方法です。
相性が良さそうな場合はそのままコップをひっくり返してメスをオスのいる水槽に移すことができるので、一番手っ取り早く簡単です。

相性の見極め方
上記の方法を試して、もしオスがメスに対して攻撃行動(つつきまわす、威嚇する)を取り続けるようならば相性はあまり良くない可能性が高いでしょう。
この場合は残念ながらお見合いは失敗となります。何匹も飼っているなら別の個体とのお見合いを試みても良いですが、一度失敗したペアでも少し時期を変えてみると上手くいったりもするので、諦めずに何度もお見合いをさせてみてください。
相性が良い場合は、つつきまわすような行動は少なく、オスがメスの顔を見てはヒレを広げてアピールするような行動が見られます。
このような場合は、同じ水槽に入れてみるとオスがメスに寄り添うように泳ぐ事が多いです。お互い多少つつくような行動が見られても、それが続くようでなければ様子見で大丈夫でしょう。
しかしメスが本気で逃げて嫌がってしまった場合は繁殖には繋がらないので、その時はまた隔離してあげてください。

ベタの産卵
オスメスの相性が良かった場合、同じ水槽に入れて数時間もすれば繁殖行動を起こして産卵が始まるでしょう。
まず最初にオスは、確実に卵に精子をかけるためにメスの体に自分の体をぐるっと巻き付けます。オスがメスに巻きついた状態のまま数秒間キープしたあと、白くて小さい卵が水槽の底にいくつも落ちていきます。
オスはメスの体から離れて、この底に落ちた卵を口で一生懸命拾い集めます。そして拾い集めた卵を自分が作った泡巣に向かって吐き出してくっつけるのです。
オスがせっせと卵を拾っている間、メスは何をしているのか?なんと気絶しているのです。完全に脱力した状態で水面にプカーっと浮いているので初めて見た人はとても驚くと思いますが、安心してください。数秒後には正気に戻り、またちゃんと泳ぎ出すはずです。
ベタの産卵行動をまとめるとこうなります。
オスがメスに巻き付く
メスが産卵して卵が底に落ちていく
オスが落ちた卵を拾い集める
オスが卵を泡巣にくっつける
この一連の流れは1回で終わりではなく、メスのお腹にある卵がすべて無くなるまで何度か繰り返します。なので、1回目が終わってもすぐに隔離するのではなく完全に終わるまで見守ってあげましょう。

メスベタの隔離
メスベタのお腹にある卵が全量出きったら、繁殖行動はひと段落着きます。
その後はどうするのか?オスメス一緒に育児をするんじゃないの?と思われがちですが、ベタの世界では育児をするのは基本的にオスのみです。
ごく稀にオスメス揃ってせっせと育児を始めるペアも見られますが、滅多にいません。メスはそのまま一緒の水槽にいると自分が産んだ卵を食べてしまったり、繁殖行動が終わった途端オスに攻撃されて弱ったりしてしまいます。
なので、産卵が終わったあとは水ごとメスベタのみをそっと掬ってあげて別容器に移し、体が傷ついたりしている場合は薬浴しながらしっかり餌をあげて労わってあげましょう。


オスベタの食卵を防ぐ
メスベタを別容器に隔離した後はオスベタによる育児が始まりますが、オスベタは「ここは子どもを育てられる環境ではない」と認識すると、せっかく生まれた卵を食べてしまう事があります。
それを食卵と言いますが、この食卵を防ぐにはオスベタが落ち着いて育児が出来る環境を用意してあげるのが一番です。水質や水温の調整はもちろんですが、ライトが明るすぎたりしないかどうかや、水槽前の人の行き来なども気にかけてあげると良いでしょう。
また、オスベタが育児をする間、オスベタに「エサをあげる派」と「エサをあげない派」に意見が分かれます。なぜエサをあげない派が居るのかというと、育児中のオスベタにエサをあげると、似たような形のせいでエサなのか卵なのか分からなくなり卵を食べてしまうから、という理由です。
しかし、私の経験上は間違えて食卵するようなオスベタはいなかったので、個人的には気にせずしっかりエサをあげた方がいいのではないかなと思います。

まとめ
ベタの繁殖の、お見合いから隔離までを解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
もともと一匹飼いが基本のベタなので、繁殖のためにオスメスを一緒にしようとすると相性の善し悪しなど気にかける所はどうしてもあります。しかし相性の見極めさえ出来れば、繁殖へのハードルは一気に下がり楽しめるはずです。
ベタの飼育に慣れてきたから、そろそろ繁殖に挑戦してみたい!という方は、ぜひ参考にしてみてください。

